2010年1月3日日曜日

一元的民主政治の成立条件

山口二郎「政権交代論」(岩波新書)

一元的民主主義と多元的民主主義 P204

憲政の常道を考える際には、どのような型の民主政治を採用するかという基本を明確にしておく必要がある。敢えて単純化すれば、民主政治には一元的民主主義(契約モデル)と多元的民主主義(協調モデル)という二つがある。前者は、政党あるいは首相候補者が国民に政権公約を示し、国民が選挙でそれを選択して、為政者に負託(mandate)を与える。政権を獲得した政党、首相は、国民に約束した政策を最大限実行することによって、民意に基づく政治を実現する。

多元的民主主義は、多様な政党が様々な民意を代表し、それらの政党同士の交渉や妥協によって政治を運営していける。

一元的民主政治の条件

第一に、強力な野党が存在し、常に政権交代の可能性が存在することである。

第二に、そのような野党の活動を支える制度的な土台が必要である。(行政府が持つ膨大な情報に対してアクセスできないことが、野党にとって政策立案の障害となる。)

第三に、与野党の間で政治的競争や討論に関するルールを共有することが必要である。最終的には多数決で物事を決めるのは仕方がないが、多数決に至るまでの過程が重要であるし、多数決で決めてはいけないことがあるという自覚も必要である。

第四に、市民的自由を尊重するという気風を警察・検察や司法に定着させることも、憲政の常道の要素である。

司法権力が特定の政権を前提として、その政権が追求する秩序を擁護するということでは、自由は確保されない。

第五に、公正なメディアが存在し、与野党双方に的確な批判を加え、国民に政治的判断のための情報を提供することがきわめて重要である。

第六に、連立政権の形成と運用に関する常識を打ち立てる必要がある。

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