2010年1月3日日曜日

負の所得税

飯田泰之、湯浅誠「経済成長って何で必要なんだろう?」(光文社)

飯田
例えば、そういった失業者の受け皿として、僕は、派遣という労働形態は非常に有用な気がするんです。収入が低くても待遇が悪くても、まったく職を得られないよりはマシなんではないでしょうか。その意味で、派遣業法の規制をさらに緩和して、とにもかくにもジョブをつくるという方向はアリなんじゃないでしょうか。

湯浅
生存が確保されるなら、それでいいと思います。ただ、そうした半就労・半失業状態には、半就労・半福祉が対応しなければいといけません。例えば、生活保護をもらいながら就労で5万円稼ぐとか、足りない分を福祉で出すとか、こういう生活のあり方、生存のあり方というのを、社会的に受け入れるかどうかですね。

竹中平蔵は「雇用を流動化したから失業がこの程度で済んでいるんだ」という言い方を好みますが、そこには、生きていけるかどうかが入ってない。食える失業と食えない非正規労働だったら、どっちがいいのか。こういうことも含めて考えなきゃいけない。でも、彼らは労働を収入の面でしか考えないから、単純に失業よりは非正規労働のほうがいいという話になってしまう。

それと同じで、雇用を流動化して「ゼロよりはマシでしょ」といったときに、それが食えるか食えないかが問題なんです。だから、食えないことを前提に、雇用を流動化して非正規労働を増やすのであれば、必ず半福祉・半就労というのを社会的に位置づけなきゃいけない。

ところが、「失業より非正規雇用がマシだろ」といったときには、社会保障の話は入ってこないわけです。「働ければ、働く場所があるだけでもありがたいと思え」という理屈だから。ここでどれだけ突き進んでいっても、半福祉・半就労は位置づかない。

だから、もうちょっと逆の側から、セーフティネットの側から、半福祉・半就労を位置づける中で、非正規労働を社会的に受け入れていく。そういう流れで、雇用の流動化という問題を考えないと、結局生存が確保されない。

飯田
その半福祉・半就労に一番近いタイプが、「負の所得税」といいますか、給付型のスタイルですね。例えば年収0なら、所得税をマイナス120万円にする。つまり120万円を給付するわけですね。その飢えで、60万円を稼いだ人に対しては、この給付を100万円にする。「120マイナス60「で給付を「60万円」にしたら「働くだけ損」ということになりますが、負の所得税では、あくまで働いて稼いだ方が総額で特になるように、税制をデザインします。これがいわゆるフリードマンスタイルの給付の仕方です。

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