2010年1月4日月曜日

外需主導から内需主導型に経済政策を切り替える際の戦略目標になるのは実質GNIであるというのはどういうことか

鈴木淑夫 日本の経済針路(新政権は何をなすべきか) 岩波書店

輸出に代わってこれから日本経済の発展を引っ張るのは何であろうか。それは,①国民生活の向上に密着した国内需要の持続的増加、②海外投資の効率化による海外からの所得純受取の増加、および③名目円レートの円高に伴なう交易利得の拡大、の3つである。(P145)

これをマクロ経済の姿として整理すると、次のようになる。

第一に、これからの生活重視のマクロ経済政策の戦略的な目標は、企業の国内における生産ではなく、国民の実質所得である。指標に関して言えば、これまでなじみの深かった「実質国内総生産(GDP)」ではなく、国民生活の基盤である「実質国民総所得(GNI)」である。

「実質GDP」に「交易利得」と「海外からの純受取所得」と加えた指標が「実質GNI」である。小泉政権以降の01-08年中は海外商品市況の上昇と超低金利に伴なう円安によって、交易条件は悪化を続け、交易利得はマイナス、つまり交易損失に変わっていた。このため「海外からの純受取所得」は少しずつ拡大してはいたが、交易損失の拡大テンポがはやかったため、「実質GNI」の増加率は常に「実質GDP」の成長率を下回り、07年度には、遂に絶対額でも「実質GNI」が「実質GDP」を下回ってしまった。(p136)

これからの日本は、これを逆転させなければならない。

企業努力による対外投資の収益率向上と、政府による対外準備の効率的運用は、国民生活の基礎となる実質国民総所得(GNI)の増加率に大きな影響を及ぼすのである。

注)
交易条件=輸出物価/輸入物価

国内で生産された付加価値の総額を実質ベースで測ったものがいつも聞きなれている「実質国内総生産(GDP)」である。しかし、この国内総生産を海外に安く売り、海外の生産物を高く勝手いると、「国内総所得(GDI)」は減ってしまう。この輸出価格と輸入価格の比率を「交易条件」と言い、輸出価格の方が相対的に値上がりしていれば、交易条件は好転(交易利得の増加)、逆に比率が低下していれば交易条件の悪化(交易損失の増加)である。(P78)

「実質国内総生産(GDP)」に「交易利得」を足した(または交易損失を引いた)のが、「実質国内総所得(GDI)」である。このGDIに、更に「海外からの所得(純受取)」を加えたのが、「実質国民総所得(GNI)」だ。これこそが国民生活の基盤である。(P79)

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